寝袋で知られる高品質ダウンメーカーNANGAと
ゴルフで培ったパーリーゲイツの視点。
今の時代にふさわしい
“都会で生きるためのダウン”が誕生。
日本生まれのブランドとして、今年 36年目を迎えたブランド<パーリーゲイツ>。
今の温暖化や激しい気温差に対してどんなものがあるといいんだろう?と考えながらも、今シーズンはダウンを作りたいと考えていました。
NANGA発祥の地である滋賀県は、PGGデザイナーの故郷 岐阜県と近く身近な存在であったことから、何か一緒にできたらという思いがありました。
NANGAの拠点である滋賀県に位置する日本百名山の一つ「伊吹山」

PGG:NANGA本社のオフィスにお伺いして、製品をたくさん見させてもらいました。その中で、保温力や対応環境を表すという最高峰レベル 8の寝袋と、レベル 7の着る寝袋といわれているブルゾンなどを見させてもらったんです。その時、レベルごとに表現していることや“着る寝袋”という表現をされているのが面白く、何か取り入れたいと思いました。
今回ブルゾンに採用したのは“トリプルファスナー”(※1)です。これがあることで好きな場所にベンチレーションとして空気口を作ることができるのがとても魅力的とだと感じました。
そして“ボックスキルト”(※2)。中に入っているダウンが潰れる場所、腕が曲がる肘部分などに採用することで、ダウンが潰れなくて済むという事を知り、ブルゾンに採用しました。
NANGA:最初にファーストサンプルを見た時はとても驚きました。
マチの部分が外からも空気が入るメッシュ素材になっており、構造自体が見たことのないものでとても難しく、正直に言うと製品化は出来ないのではないか?とまで思いました。
ボックスキルトのパーツは細かくて、箇所によっては小さすぎるパックになるため手作業でつけることもあります。また、パーツサイズもそれぞれ異なるためそれをメッシュにどう縫い合わせるかの工程も非常に難しそうでした。
PGG:メッシュは夏に使う素材で、ダウンは冬に使う素材です。それぞれを組み合わせ、ダウンブルゾンなのに極端に空気が抜けていくこと熱が溜まらないのかなと思いました。
まずメッシュのボディを作って、そこにダウンパックのパーツをくっつけたいなと思ったんです。
外は寒いけどオフィスや地下鉄は暑い。そんな環境でも過度な熱が逃げていくので、脱がなくて済むし持ってなくて済む。それが叶うと思ったのです。
製品化に向け進めていく中でやっぱり難しい部分もあったのを細かく調整して、やっと洋服にできる。製作段階で色々なアドバイスいただいてようやくまとまった背景があります。
ボディの素材は街でも着られるマットで柔らかな質感を保ちつつ、ゴルフブランドとしてはストレッチも重要視しているのでこの生地を採用しているのですが、素材面でもなかなか難しかったようです。


NANGA: 今回のウェアに採用されている生地はボックスキルト(※3)というのもありを扱うのはとても難しかったです。
NANGAで展開しているハイエンドラインの“ミカミ”という製品にもボックスキルトを使っているのですが、今回のコラボレーションでは袖までほぼ全部ボックスキルトなのでウェアでここまで全部にキルトを使った商品は今回のものが初めてだと思います。
パック状になった小さいパーツが沢山あるので、それを縫い合わせることが大変でした。寝袋では当たり前のようにやることが、ウェアでは慣れていないのもあって苦労しました。
ダウンパックの数は製品では過去最大の39か所で、初めての試みです。パーツごとに中に入れるダウンのグラム数を変えていかないと同じ膨らみに見えてこないので、箇所によって大きさも中のダウンの分量も様々です。
ブルゾンの脇の下にあるパックが一番少ない箇所でダウン2g。一番多いところは背面一番下にあるパックの15gが最大です。身体の動く位置に合わせて細かく設計されています。
PGG:このダウンブルゾンの他にテーラードジャケットのセットアップとTシャツも制作しています。これは、これまで見たことのないダウン製品だと自分は思うんです。
一番理想な冬の服って「何もまとわないけど、体の周りにうっすら暖かい空気をまとえたら」というのがあるので、まさに今回のこのジャケットとパンツは生地自体は薄いけれど体の周りにうっすら暖かい空気をまとえると思ったのと、“ちょうどいい”自分の体温をキープするものとして朝起きてから夜寝る時までずっと着ていられるダウンだと思ってます。
また、PGGはスポーツブランドとしてダウンは扱ってきたのですが、羽毛を入れられる単位として 10gなどの2桁を想定していました。
今回ダウンでありながらも「極限に薄いもの」を作りたかったのでダメ元で「5g」と言ってみたら「1g単位で大丈夫です」って普通に言われて(笑)。本当に驚きました。それが普通にできることがNANGAの素晴らしい技術だと思います。
NANGA:ダウンの量は1g単位の量りがあります。5g以上は機械を使用していますが、5g以下は手で適正量を感覚で把握しているんです。


PGG:一般的に 500フィルパワー(※5)あれば「質の良いダウン」と言われていますがNANGAのダウンは760フィルパワー以上もあります。なぜそんなことが可能なのか、知りたいです。
NANGA:もともとは布団の産地で、下請けの縫製工場としてスタートしたNANGA。安価な布団が海外から流れてきたことで、寝袋のOEMをスタートしました。
そうして次は自社ブランドで販売をしていこう、という時に先代が日本で一番いい羽毛を求めて河田フェザー(※6)を訪問し、「こちらの原料であれば間違いない」と確信したその時からずっと河田フェザーを採用しています。
その理由はスペインの羽毛を使用しているということ。スペインの羽毛は飼育期間が長いため水鳥の羽が大きかったり、ダウンボールの膨らみが大きいものが取れるのが大きな点です。
そして三重県の気候と水により非常に綺麗ダウンを洗浄できる。この 2点が、羽毛の品質、フィルパワーの担保に繋がっているので製品のほとんどは河田フェザーのものを使用しています。
やはり、温かさが違うんです。
NANGA:NANGAにとって温暖化は死活問題だと感じています。直面する課題は販売の影響と環境の責任。
従来の冬の期間において、暖冬で気温が高い日が増えると厚手のジャケットの需要が減少します。暖冬でも対応できる軽量なアウターや温度を調整しやすいアイテムを求める傾向が強まっていくのに合わせて商品構成の変化が必要になってくると考えています。
また、ダウンを扱っているため原材料の調達時の環境負荷や倫理観、ダウンの採取方法や動物福祉の観点から非倫理的という厳しい面も向けられ、環境負荷物質の排出も問われます。そういう面も含めて既に取り組んでいるNANGAとしての持続可能な社会の構築は今後も出来る限り行っていきます。
そして「温かさの追求」を企業理念として掲げているという面でも温暖化は深刻な問題です。
街ではオーバースペックすぎるところがあるダウンジャケットですが、今回のように風が抜ける仕様になったりと新しいニーズに応えていく発想の転換、両立をしていく必要があると考えるきっかけになりました。
NANGAの皆様 (敬称略)
小谷 勝律
村上 正恵
グエンティハン
レーティーガー
堀江 一華

NANGA:NANGAの社名の由来は、 ヒマラヤ山脈にある標高8126mの「ナンガパルパット」という山の名前から取っています。ナンガパルパットはその登頂の困難さと多くの遭難者が出ていることから「人喰い山」と呼ばれています。
それで、先代の社長が「どうせやるんやったら、誰も登ったことのないような難しい山に登ろうよ」という意味を込めて“NANGA”という名前がつけられました。そこには社長の“挑戦”という強い気持ちがあり、NANGAとしてもとても大事にしている言葉です。
今回のお取組みを通してパーリーゲイツというブランドが誕生したきっかけの「今までのゴルフウェアでは無かった、自分たちで着たいゴルフウェアを作ろう」というコンセプトと“挑戦”はとても通ずるものがあると思いました。
PGG:パーリーゲイツ(PGG)もNANGAも日本生まれのブランドです。日本のこの山々の独特な地形や素晴らしい四季があること。
そして日本人が考え、日本人が作った繊細さをこのコラボレーションを通じて改めて感じてもらえたら嬉しいです。
現代の難しい気候で今回の製品に対して“これさえあれば”、という満足感と安心感を感じてもらえることを願っています。

text:PGG
※すべての商品は税込み価格で表記しています